魂魄堂 書庫

- 君はドダイYSを知っているか? -


そう、あの「ドダイYS」なのである。君は知っているか?
そうか知っているか。なら良い。



−終−



まあ、冗談である。
説明するまでも無いが、
機動戦士ガンダム(ファースト)でありジャブローで大活躍でありグフの移動用に使われていたのであり なぜかドム(リックドムにあらず)は使ってなかったのでありグフと云えばランバ・ラル専用モビルスーツだった のであり「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」の台詞で有名なのであり木馬(ホワイトベースね)での初の 白兵戦を仕掛けた人間でありキャスバル・レム・ダイクンとは旧知の仲でありその妹がアルテイシア・ソム・ダイクン でありセイラさんであるのだ。

話は変わって、昔近くに「黒木模型店」と云う、狭い部屋に板張りの床がぎしぎし鳴って接着剤(当時はボンド と呼んでいた)の臭いが染み付いていて、壁には無造作にプラモデルがぎっしりと詰まっていた店が在った。
余談ながらその店は何年後に前面改装(自宅でもあった)し、大幅にリニューアルしたものの直後に店主(じじぃ) が体調を崩して店を閉めてしまったと経緯がある。暫くぶりに訪ねてみて張り紙がしてあったのを見ると、 時代を感じてしまうのである。
そこでは入口横にあるウィンドウにて客が作成したプラモを展示するとサービスを行なっており、展示しているプラモ の塗装の美しさや継ぎ目を消したヤスリ技術などに憧憬していた。やはりそこに展示されるのは一種のステータス であり、当時小学生低学年ながらいつかは自分も・・・・・・と決意したものだった。
在る日私はプラモを買い、そして展示してもらうべく持参したのだ。ちなみに展示されるためには店主であるじじぃ の審査が在ったのだが、今となってはじじぃの審美眼が正しかったのかは定かでは無い。そこに持っていったのがくだ んの「ドダイYS(グフ無し)」である。確かにグフは好きだったのだが、グフも持っていないのに何故に乗り物である ドダイYSを購入したのか経緯は今となっては闇の彼方。
そして作品と云えば、ヤスリも満足に掛けてなくカラーが無かったので未塗装のまま。それまでそんな未完製品とも 云える作品が展示された事は無かった。しかし小学生の情熱にほだされたのか、じじぃはそれを展示してくれた。 ウィンドウに置かれた貧相なプラモ。確かに目的は達したが、何か釈然としなかった。
展示期間が終わり、賞品(?)の単二電池数本とプラモを自転車の籠に入れ家路についた。帰宅してみたら 衝撃でプラモが壊れていたが、何も感慨は無い。
せめて塗装すべきであった。

当時人気絶頂であったガンダムプラモのために、それぞれのモビルスーツ用のカラーが3色セットで販売されていた。 ガンダムなら「白・青・赤」などと小さなびんが箱詰めされていた。私は何故かそれが好きで、対象プラモを持って いないのに、その「ガンダムカラーセット」をコレクトしていたのである。
持っていても一度も使わないであろうそれらを並べて鑑賞するのはとてつもない至福の時であったが、在る日それに 気がついた。ガンダムは良いだろう。

しかしザクはどうかなあ・・・・・・

ご存知の通り、緑一色のあれである。一応コックピットはグレイなのだが、カラーセットでは3色中2色は緑なのだ。 シャア専用ザクは緑の代わりに赤が2色となっていたのだが、どこをどう塗り分けて良いのか解らない。ザクと云えば、 冒頭に初めて操縦したアムロによってザクがやられるが、仮にも訓練を経てモビルスーツのパイロットをしている エリート軍人が、頭から飛び出すバルカンに対処できずやられると云うのも悲しいものである。いくら新型で ガンダニウム合金を使用していると云ってもあんまりではないか。
話は変わるが私の最も好きなモビルスーツがグフで2番目がザクレロなのだが、それに続く3番目のお気に入りの 「ビグザム」のカラーセットがザクに輪を掛けて酷い。

ビグザムとはジオンが威信を掛けて開発したモビルアーマーであり横にした菱形にヒヨコのような脚を付け嘴に あたる処に拡散メガ粒子砲(当時はまだそう呼んではいなかったか)があって絶対に地上で立つのは不可能 だと思われしかし宇宙用であるから心配ないけどだったらどうして脚があるのかモビルアーマーでは無くすっきり と戦艦でも良かったのではと思われ総帥の息子ドズル・ザビが搭乗していたがあまりの巨体に小回りが効かず ガンダムにやられそうになった挙句ドズル・ザビがマシンガンを持ち出し「やらせはせん、やらせはせんぞお!」と 無謀にもガンダムに立ち向かいアムロに軍人の妄執を見せ付けたモビルアーマーである。

ザクレロはマイナな為、カラーセットが無く私はビグザムのカラーセットを喜び勇んで購入した。知っている人は すでに想像に難くないだろうが、

ビグザムは全身緑一色なのである。

麻雀で云う処の役満であり、私を絶望させるのに十分な衝撃を伴っていた。

3色とも緑、しかも微妙に色が違う・・・・・・

- 了 -

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