「じゃあサタンがチョコレート工場にやってきたのお話をしてあげよう」
「うん!」
「雪がちらつくクリスマス、家族が楽しくケーキを食べ笑いあう中サタンはやってきました。
サタンがかぶっていた帽子を放り投げると、それはチョコレート工場で一人寂しく番をしていた小学生の女の子にふわりと乗りました。
サタンは女の子に云いました。
『寂しくはないかい?』
すると女の子は答えました。
『もう少ししたらお兄ちゃんが迎えに来てくれるから平気だよ。でもお腹空いちゃったしケーキも食べたいから早く来ないかな』
サタンは云いました。
『お兄ちゃんはお土産持ってきてくれるのかな?』
女の子は云いました。
『さっき電話来て、もうちょっとしたらお土産持って来るって云ってたよ!』
サタンは云いました。
『そっか。それは楽しみだね。』
女の子は云いました。
『うん!いつもクリスマスにはサンタさんの格好して来てくれるの。でもお兄ちゃんのせいで、二年くらいまえまでサンタさんが本当に
居るって信じちゃってたよー』
サタンは云いました。
『でもサンタクロースは本当に居るかもしれないよ?』
女の子は云いました。
『…だったらいいな。お兄ちゃんと二人きりだし、本当にサンタさんが居るならお兄ちゃんを楽にしてあげて欲しいな』
サタンは云いました。
『優しいね。でも大丈夫。お兄さんは君が居るだけでとっても嬉しいって云ってたよ』
女の子は云いました。
『えへへ。だったら嬉しいな』
……おしまい」
「続きは私が話そう」
「だ、誰だお前!?」
「私はクリスマスに希望を与えるもの…いま私の事を話してくれてたじゃないか」
「く、見張りはどうしたんだ!?」
「ああ、彼なら今頃サンタさんに歓迎されてるはずだよ」
パン!
「ほら、クラッカが鳴っただろう? 良かったね、お兄ちゃんが迎えに来てくれたよ」
「くそっ!」
「あ、今は行かない方が…」
パン!
「だから云ったのに…クスクス」
「貴方はだぁれ?」
「私は君のサンタさんをここまで案内してきたんだよ。ほら、お兄ちゃんが来たよ」
「あ、お兄ちゃん!今年も真っ赤なサンタさんの格好だね!」
サタンは云いました。
「ねえ、神様。こんな愉しい日に独り寂しい思いをしている人が居るんだよ? 貴方が
平等を与えてあげないなら、私がそれをあげよう。独り寂しい時間を過ごしている人の
望みを叶えてあげる」
女の子が観ていたテレビが切り替わる。
ただいま入りましたニュースによりますと、今から約二時間前に、拳銃を持った男が
民家に押し入り居合わせた住人三人を銃殺し逃亡した模様です。なお金庫が荒らされており、
物盗りの犯行とみて捜査を続けております。次のニュースです。先日起きた女児誘拐事件ですが、
未だに進展がなく、唯一の身内である女児の兄が消息が不明となっている事が───
- 了 -
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