魂魄堂 書庫

- サタンがメイドバーにやってきた -


「じゃあサタンがメイドバーにやってきたのお話をしてあげるわ」
「ありがとう」

「雪がちらつくクリスマス、家族が楽しくケーキを食べ笑いあう中サタンはやってきました。 サタンがかぶっていた帽子を放り投げると、それはメイドバーで一人寂しく呑んでいた男性ににふわりと 乗りました。
サタンは男性に云いました。
『折角バーに来てるのに元気ないのね』
すると男性は答えました。
『オレって人付き合いが苦手でさ。こういうトコ来たって積極的にメイドと話したり出来ないし。 ホントは酒もあんまり好きじゃないんだけどさ。でも家で独りは寂しいし…』
サタンは云いました。
『ふふ、それは悲しいね。でも、あそこにいる小柄なサンタさんは貴方に興味があるみたいよ?』
男性は云いました。
『まさか。俺みたいなヤツに興味なんてあるはずないよ。結構通ってて常連だと思うけど 誰も俺の名前すら知らないだろうしな』
サタンは云いました。
『ホントひねくれてるのね。そうやって最初から諦めてたら何も始まらないわよ? ほら、さっき の娘、オーダこなしながらこっちをチラチラ見てるじゃない。自分を卑下してるけど、なかなか カッコイイよ?』
男性は云いました。
『なかなかおだて上手だね。綺麗だし、こんな店じゃなくてもっとちゃんとした処でも 通用しそうだよ』
サタンは云いました。
『あら、貴方こそお上手。そうだ、あそこの彼女にクリスマスカードを渡してみたら? 此処で 売ってるヤツだけど1枚プレゼントしてあげるわよ。』
男性は云いました。
『じゃあ書いてみるかな…』
サタンは云いました。
『景気づけにワインを如何?』
男性は云いました。
「ホント商売上手だな! まあいいや、じゃあ頼むよ』
サタンは云いました。
『…できた?』
男性は云いました。
『うん、じゃあ渡してくれる?』
そして男性はサンタのコスプレをした女性店員へのカードを託しました。それを見送る 彼の顔は久しぶりに楽しそうだったそうです。
……おしまい」

「で、どうだった?」
「どうやら貴方はかなり人気があるみたいだよ。だから彼女の他にも貴方に逢いたいって 人が居るみたい。もうちょっとしたらその人が来るって」

そういってサタンが姿を消すと扉の向こうから制服を着た女性が2人入ってきました。 そしてカードを渡した女性の耳元に顔を寄せると男性をちらっと見つつ何かを囁いたのです。 それから制服を着た女性が男性の許へやってきました。カードを渡した女性は恥ずかしそうに 彼女たちの背中に隠れるようにしていました。
婦人警官のコスプレをした2人は云いました。脅迫及び威力業務妨害の現行犯で連行します。 そしてサンタの娘に、もう大丈夫だからと囁きました。婦人警官のコスプレをした2人組は 男性の両腕に手を掛けるとゆっくり周りに見せつけるかのように店を出て行きました。

サタンは云いました。
「ねえ、神様。こんな愉しい日に独り寂しい思いをしている人が居るんだよ? 貴方が 平等を与えてあげないなら、私がそれをあげるの。独り寂しい時間を過ごしている人の 望みを叶えてあげるわ」

- 了 -

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