魂魄堂 書庫

- サタンが学校にやってきた -


「じゃあサタンが学校にやってきたのお話をしてあげよう」
「うん!」

「雪がちらつくクリスマス、家族が楽しくケーキを食べ笑いあう中サタンはやってきました。 サタンがかぶっていた帽子を放り投げると、それは学校の屋上に佇む少年にふわりと 乗りました。
サタンは少年に云いました。
『やあ、元気がないね』
すると少年は答えました。
『お父さんの仕事がなくなりそうなんだ。お金もあんまりないし…だから僕、クリスマスのプレゼント はいらないからお父さんに仕事をくださいってお願いしたの』
サタンがゆっくり聞きました。
『お願いは叶いそう?』
少年はぽつりと云いました。
『お父さんの会社の偉い人の子供が僕と同じ学校なんだ。だからその子にお願いして みたんだけどダメだって』
サタンはゆっくりとこう云いました。
『クリスマスツリーの先についてる大きな星を知ってるかい?』
少年は不思議そうに云います。
『うん、知ってるよ。とっても高いところにあるんだよね!』
サタンは軽く頷いて云いました。
『じゃあいいことを教えてあげよう。あれはサンタクロースに解るような目印なんだよ。 高くて大きい木の先に大きな星をつけると、サンタクロースが来てくれてプレゼントをくれるんだ』
少年は目を輝かせます。
『ホント!? あ、でも僕そんな大きな星持ってないや…』
がっかりする少年にサタンは優しげに微笑んで黒い袋から大きな星を取り出して、
『ほら、これをあげよう。これをお家にある大きな木の先につけるんだよ』
少年はいいまました。
『え、本当にいいの!? これを飾ればお父さんにお仕事プレゼントできる?』
サタンは頷きました。
『ああ、きっと君たち家族が生活に困るような事はなくなるよ』
少年は大喜びで家に帰りました。
サタンは満足そうに云いました。
『きっとキミの願いは叶うはずだよ』
……おしまい」

「それで…どうなったの?」
「約束通り庭にある気に星を飾ったんだね。ここから月に照らされてよく見えるよ。 ねえ、神様。みんな楽しくプレゼントを貰ったり、恋人と肌を合わせてる日にこんな 哀しい少年もいるんだよ?貴方がこんな不公平を与えるなら、私が平等を与えよう。 総ての物事はは等価だということを教えてあげるよ」
「もうお金がなくてお母さんが困ったりしない?お父さんが毎日頭を下げたりしなくても いい?」
「ああ。あんな高い処でキミはよく頑張ったね。もう大丈夫だからゆっくりおやすみ。 眼を閉じてよく休むといいよ」
サタンはそういって少年の瞼を閉じました。そして木の先に飾ってある星を眺めます。 そして折れた枝、地面に横たわる少年、真っ赤な鮮血。
「これでお父さんとお母さんにたくさんのお金がプレゼントされるんだよ」
玄関の扉が開いて人影が見えてきました。人影がゆっくりと少年に近づいて来て ───

- 了 -

目録へ