「じゃあサタンがコンビニにやってきたのお話をしてあげよう」
「……ありがとうございます」
「雪がちらつくクリスマス、家族が楽しくケーキを食べ笑いあう中サタンはやってきました。サタンがかぶっていた帽子を放り投げると、
それはコンビニのレジで独り寂しく精算している店員さんにふわりと乗りました。
サタンは店員さんに云いました。
『クリスマスに若い女性がシフトあるのですね』
すると店員さんは答えました。
『今時の若者はそんなにクリスマスにこだわってないんですよ?』
サタンは云いました。
『……なるほど。だから貴女は休みなのにわざわざ他の人とシフトを変わったのですね』
店員さんは云いました。
『どうせわたしひとりですし』
サタンは云いました。
『……なるほど。貴女はつい先日半年ほどおつきあいしていた男性との別離を経験していましたっけ』
店員さんは云いました。
『わたしがいけないかったんです。ちょっと"重い女"だった、みたいで』
サタンは云いました。
『……偏食な彼のために材料や調味料にこだわった料理をわざわざ料理教室まで行って覚えたというのに酷い話です』
店員さんは云いました。
『わたしが勝手にやったことだから』
サタンは云いました。
『……じゃあ私からのプレゼント。今日日付が変わる前に、貴女の作ったおでんを30人に売って御覧なさい』
店員さんは云いました。
『何が起きるの?』
サタンは云いました。
『……それはお楽しみに。それにしてもこのおでんは"なまら美味しい"ですね』
店員さんは云いました。
『今時の若者はそんな物言いはしないのですよ』
……おしまい」
「ごめん、俺が間違ってた。ひとりになって考えたら、キミほど俺のことを考えてくれる人は居なかったよ」
「それを云いにわざわざお店に? それにずいぶん顔色が悪いけど……?」
「ひとりで適当に食事してたら倒れて病院送りさ。昔はこんなことなかったのにな」
「大丈夫なの?」
「キミと居た半年間はこんなことなかったから久し振りでちょっと、ね」
「それなら良かった」
「おかげて食事もできずにお腹が減ったよ。お仕事はそろそろ終わり?」
「いま交代することろ」
「じゃあちょっと外で待っててもいい?
「うん、いいよ」
…
……
「緊急車両が通ります!道を空けてください!」
「通報元は?」
「二丁目のコンビニです。若い男性が倒れて意識不明とのことです!」
サタンは云いました。
「ねえ、神様。こんな愉しい日に独り寂しい思いをしている人が居るんだよ? 貴方が平等を与えてあげないなら、私がそれをあげよう。
独り寂しい時間を過ごしている人の望みを叶えてあげる」
「救急です。何があったんですか?」
「僕はついさっき交代した店員なのですが、最後に残っていたおでんを買ったお客さんが外で食べたとたんに倒れて──」
- 了 -
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