魂魄堂 書庫

- 中と外 -


「さあ、彼女を解放してもらおうか」
「それが出来ないからこそ、お前がここに来たのだろう?」
「・・・まあ、な」
「自らの躯に武器を埋め込んで」
「いうな」
「そして自らの命を喪うとしってもなお、か」
「それが俺の仕事だ」
・・・・・・・・・・・・
私はぼんやりとそのやりとりを見ていた。
囚われている私。
待ち続ける私。
無力な私。
でも彼は
彼は私を必要としてくれた。
でも
それを望めば
自らの破滅だという事も
私と彼は知っている。
・・・・・・・・・・・・
「終焉の時、か」
「ああ、俺もお前もな」
・・・・・・・・・・・・
「・・・目が醒めたようです」
「私・・・」
「動かないでください。貴女はずっと昏睡状態だったのです」
「昏睡?」
「悪性のウィルスに感染して、3日前にやっと抗体が完成したのです。 それをベクターに運ばせて・・・おっと、それよりもう少し寝ておきましょう」
・・・・・・・・・・・・
私は知っている。
私に起きた事を。
囚われていた私
私を縛っていた彼
彼を滅ぼすために
送り込まれてきた人

私は泪を流す。
彼は哀しげにこういった。
「こんな形で逢いたくはなかった」
だから私は
ただ彼に身を任せていた。
彼と私と私を助けに来た人。
みんな笑って───
私だけが残ってしまった。

- 了 -

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