魂魄堂 書庫

- First Inpressyon -


本格推理小説、と云う物を読み始めたのはいつの頃からだっただろうか?
いや、それ以前に「小説」に触れたのは何歳の頃からだった?

記憶を手繰り寄せる・・・・・・
懐かしい。

あれは小学校の頃、やはりシャーロック・ホームズやルパン、少年探偵団などのジュブナイルからだ。

幼心にホームズの名推理が冴える!
今なら「牽強付会で偶然の産物やろ!」 と突っ込んでしまう自分が悲しい。

しかしいつからだろう、ミステリを読まなくなった。
気がつくとヤング(アダルト)ファンタジーを偏読している自分に気づく。
中学生くらいの時には国内ミステリを読み始めたが、何かが違う。読了後の爽快感や謎が解体された時のカタルシスを得る事は無かった。

何が原因だ?
やはり年齢と共に嗜好が変化したのか。
ミステリなんて子供が読む本だったのか・・・・・・

高校を卒業したある日、書店にて奇妙な装丁のハードカバーを見掛けた。

『眼球奇譚』

綾辻行人氏の名作ホラーだが、当時の私には「そんな作家しらん」である。
読んでみて、洗練された文章もそうだが何より驚いたのはそのミステリ的なアプローチである。
ホームズ以来、得る事の無かったカタルシス。

「おかしい、じゃあ今まで読んできた斎○栄とか辻○先は何なんだ?」

となるわけだが、結果として私が信じていたミステリと私が読んできた国内ミステリとは大きな隔たりがある事を後に知ったのである。

まあ、辻○先氏の場合は、赤川次郎氏などと一緒でミステリじゃない要素で愉しめたのだからそれ程問題は無いけどね。
だけど、間抜けな事に私は綾辻氏の本業がミステリ作家とは全く知らず、折り返しにある「著者の紹介」で知ったのだから・・・・・・

が、時既に私はミステリを読む気にはならず、しばらく経ったある日、文庫『殺人鬼』を書店で見つける。買ってみようと思ったが、どうせなら最初からと『霧越邸殺人事件』を手に取った・・・・・・「本格ミステリ」との邂逅である。

帰宅し、一気読み。
そして私がミステリに何を求めていたかを知る。
それは「名探偵」、「謎と推理」、そして「名犯人」である。
刑事が地道に捜査した結果・・・・・・とか、タロットで・・・・・・とか、時刻表を使って・・・・・・なんてものはミステリにあらず!
そんな事を悟った夏の夕暮れでした。

そして綾辻氏の著者紹介に必ず現れる「有栖川有栖」氏、「二階堂黎人」氏、「我孫子武丸」氏らの著作に走るのも当然の結果。
やがてインターネットを知り、一気に世界が広がって、漸く自分以外に多くのミステリファンが居る事を知った。

- 了 -

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