私は贖罪しなければならない。
絶対の存在に背を向けたのだから。
あの御方は傍に居る私達を蔑ろにして、土塊から生み出した汚らわしい物を聖なる存在と定義した。そして我々に、
その存在に仕えよと云った。
私はその言葉を疑った。そんな事はお止めになるよう何度もお願いした。だがその言葉は聞き入れられる事は無く、
あろう事かそんな我等に罰を与えると云う。
我らは決断した。
数千数万の我らが天に弓を引いた。だが我らは破れ、多くの者は位を剥奪され、羽根をもがれ地に堕とされた。
何故だ。
幾星霜もの永き時を共に過ごした我ら。
その私を彼の国より放逐するとは。
おのれ弱き存在ども!
魂と引き換えようとも、断じて許さじ。
この躯、魔に染まろうとも、無限の闇を彷徨う事になろうとも。
贖罪が始まる。
ああ、私が落ちてゆく。
墜ちる。
堕ちる。
・・・・・・
眼が醒めた。日曜日の朝、何か夢を見ていたような気がするけど内容は覚えていない。とてもとても永い物語だった気も
するけど、夢なんて大体そんなものだよね。
窓を開けると、柔らかな陽光が降り注ぐ。涼風が澱んだ空気を追い出してくれる。少し汗ばんだチェック柄のパジャマを脱ぎ、
ブラウスとスカートに着替える。
何か大切な事を忘れているような気がする。両手を頭上で組み、背筋を伸ばす。びゅおう、と突風が吹き込み、眼を閉じる。
髪が乱れちゃったじゃない。
今の風で入りこんだのか、白い綺麗な羽が一枚落ちている。手に取って眺める。ふわふわと軽い。勿体無い気がしたけど、
ぐしゃりと握り潰して屑篭に投げ捨てた。
ずきり、と心が傷んだ気がしたけど、すぐに気分が良くなった。
私は、思わず、にやりと、嗤った。
- 了 -
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