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- ■フリッカー式
- 講談社ノベルス 2001/07/05 初版
- 本体価格 880円(税別)
- 2002/03/09 記録
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「じゃあ志保ちゃんニュース」
ある日妹が死んだ。自殺だったと云われ、見知らぬ男から妹が陵辱されているビデオテープ
と犯人達の娘たちのデータやスケジュールを手渡される。妹の復讐を企てる時、世間では
連続女性刺殺事件、通称「突き刺しジャック」が世間を震撼させていた。
前評判が最悪だったので暫く読む気にはなれなかった。しかし読んでみたら、これが結構
面白かったりして。一応ミステリィ的な展開を迎えるけど、本作をミステリィだと思ったら
負け。壊れっぷりとマニアック部分を堪能できれば勝ち。
ちなみに私はマニアック部分に関するネタをほぼ見知っていたから、そんなに違和感は
無かったけど、そうじゃなかったら会話の端々が意味無しジョークになってしまうだろうな、きっと。
舞台も私が住んでいる街だし、作中で語られる幽霊病院だって知ってるし。地元的な
知識もあったのも幸いしたのかも知れない。
もともとこれはパロディに過ぎないし、キャラクタ設定やらプロットやらもすべてどっかで聞いた
事あるような内容で、それらのパーツを勝手に持ち出して組み合わせただけにすぎない。
しかし重要なのは、そこで表面化してくる無秩序さ。
多種多様なものをくっつけたら、確実に全体的な歪みが生じる。だが、そこが面白い処だ。
これで表面上、何の違和感も感じなかったら逆にくだらないパロディ小説で終わってしまって
いただろう。
本作がそうじゃなかったのは、無意識的に吹き出てくる歪み、そして歪んだ世界では
自然に受け入れられてしまうコワレタ存在たちのお陰だろう。プロットは崩壊しているし、
部分部分は聞き覚えがあるし、広げた設定は放置プレイだしとまったく落ち着きを
見せないが、とにかく私とは何かが噛み合ってしまった。
つまりは、そう、悪くなかったのである。
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