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- ■AΩ
- 角川書店 2001/05/30 初版
- 本体価格 1500円(税別)
- 2001/07/28 記録
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「ロケットパンチ・・・・・・」
ある宇宙生命体が別の生命体を追って地球に到達する。追っていた生命体は
謝ってジェット機を墜落させ全員が事故死する。その最中追われていた生命体は
姿を隠したため、追跡者は一体の屍体に潜り込み生き返らせる事によってこの世界
で活動する事にした。そんな中、目標と思われる生命体が街を破壊し始め、追跡者
は合体している人間の躯を変化させ生命体と対峙する事になった。
SF的視点からみた「ウルトラマン」である。単に巨大化した、ではなく誰がどうやって
どういう原理でそうさせるのか。そして特撮ではおざなりになりがちは一般市民の恐慌や
生命体によって惨殺されていく人間達の細かい描写が生々しい。
話は次第に広がり地球規模の問題に行き着く。途中登場する"人間もどき"と呼ばれる
コピー人間たちがまた深い悲しみと絶望を語る。自分が覚えている事、自分が自分である
というアイデンティティが崩壊した時の描写が切ない。決して救われる事の無い、彼らに
主人公は既に人間を超越してしまった自分を重ね合わせていく。
大筋ではパロディの筈なのだが、空虚によって反転させられより強大な恐怖へとシフト
していく。ウルトラマンでありデビルマンでありマグマ大使であったものが、組み換えられ
氏特有の空間をねじ曲げる描写によって震えるほどの恐怖を生み出しているのだ。
そこにあるのは最早無力のみ。人間たちは見捨てられ逃げまどう。
「貧弱ぅー。貧弱ぅー」
子供が無慈悲に虫をいたぶり殺してしまう如く人間たちは絶望の淵へと。
「愛」を求めて「愛」の為に人間である事を捨て戦う主人公。パンドラの匣の底の
「希望」を手にする事が出来るのか。恐怖を全面に押し出しつつ、物語性の高い
エンタテインメントを創り出すことに成功している。いつの間にか恐怖が悲哀に
変わっているのに気がつくだろう。
「ガ」ってそういう意味だったのか・・・・・・
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