魂魄堂 読了書覚書 - 歌野晶午 -


■生存者、一名
祥伝社文庫 2000/11/10 初版
本体価格 381円(税別)
2002/01/29 記録

「誰に助けを求めるの?」

鹿児島の沖にある孤島に6人の男女が降り立った。彼らはある宗教団体の 信者であり、都内で爆弾テロを行ってここに逃亡してきた。だが翌日1人が 船と共に姿を消し、遺された人たちは争い始める。そして殺人事件が。

このページ数でここまで盛り上げる濃いプロットは流石であろう。自然に 「絶海の孤島」へ導き、そしてそれぞれが疑心暗鬼になる条件に巧く 誘導している。

中盤にかけての展開はまさに『そして誰もいなくなった』のように、何の前触れも 無く、1人また1人と姿を消していく。この孤島というシチュエーションにおいては 細かいアリバイやトリックなど消し飛んでしまう。それだけ舞台設定や人間関係 が巧妙なのだ。

しかしながら登場人物の少なさや、展開の早さが裏目に出たのか、メイン のネタはすぐに割れてしまう。ロジック的には少し牽強付会気味ながらも、プロットが それを補っており、ラストの展開もなかなかニヤリとさせられた。


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