魂魄堂 読了書覚書 - 司凍季 -


■からくり人形は五度笑う
講談社ノベルス 1991/09/05 初版
本体価格 720円
2006/03/19 記録

「ああ、口から出任せでね」

小説家・依井の元に行方不明になっていた父親からの葉書が届く。そこには沙華姿という 村の姿が描かれ「てまりうた」という詩が書かれていた。依井が父親の情報を求めその村に 行ってみると、父親が行方不明になった同時期にこの村で謎の殺人事件が起きていた。そして 依井が調査を開始すると過去の事件を思わせる短歌が送られてくるようになる。依井は事件の あらましを纏めて友人の一尺屋に助力を請う事にしたのだが…。



一尺屋遥シリーズ第一作にしてデビュ作。全体的に地味な作風だが何故か読んでいて飽きない。 探偵役の一尺屋は性格も悪く放浪癖もあり、作者が島田荘司のファンだということもあって 御手洗潔を髣髴とさせる。

基本的に物理トリックを用いているが、物語とのバランスが良くてよくありがちな「無理やり トリックを使った感」がない。田舎の描写が上手くて生活感があり読み物として楽しめる。 ミステリィとしてはトリックの性質上伏線らしい伏線を張るのが難しいかもしれない。

すっかり新作が出ていない作家ではあるが、個人的にはかなり好きな人なのです。


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