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- ■デッド・ディテクティブ
- 講談社ノベルス 2000/12/05 初版
- 本体価格 900円(税別)
- 2002/4/23 記録
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「どうやら舌を抜かれんですんだようだの」
沖縄へ向かう宗教団体のクルーザに乗っていた柳みすず。だがクルーザは嵐で沈没して
しまいみすずは死んでしまう。そしてみすずは死後の世界で審問を受ける事になったのだが、
審問者たちに宗教団体の中心人物であった天法輪レンゲを殺したのだと云い渡される。
みすずはそれを冤罪だと訴えたが、総ての嘘を見通す筈の閻魔大王ですら真実を
探り当てる事ができなかった。
10年ぶりくらいに読んだ辻作品。しかもまだ本格推理に出逢う前だったから、正直
今読んで愉しめる作家なのか疑問に思っていた。しかし良い意味で裏切られ、
それどころが読むのが止まらなくなってしまった程。
まずは設定の勝利。死後の世界での審問とは。そして閻魔大王には嘘を吐く事が
赦されない、と云う点が不可解さを上昇させている。通常のミステリィであれば、少なくとも
犯人は嘘をついている。だが「お前が殺したのか」の問いに誰も嘘を吐くことなく、
それでいて犯人がその中に居るのだから。
まあ、問題点としては結構複雑なクルーザの全体見取り図くらいはあって然るべき
なんじゃないかと思った。アリバイが重要視されるので、誰がいつどこに居たかを把握
するためにもこれは必需品だろう。
プロットも良く、ストーリィ自体も評価したい。明るいキャラクタたちで救われているが、
結構切なくて悲哀的な物語で話が進むにつれてしんみりしてしまう。ミステリィの体裁を
保ちつつ、そしてこの奇矯な設定なのに、しっかりと物語を閉じることに成功している。
辻作品を読んでいる読者は途中、もしかして・・・・・・とほくそ笑んでしまうよな展開が
あったりして結構細かいところにも気を配りつつ、それ自体が伏線でもあったりする。
ミステリィ的サプライズに加えてプロット的サプライズまで用意されており、突飛な設定に
説得力を持たせる事にも成功している。
個人的には最期の展開には納得しかねるのだが。随分割り切っているような気がして。
そして最大の疑問点は、
なのだよ。
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