魂魄堂 読了書覚書 - 首藤瓜於 -


■脳男
講談社 2000/09/11 初版
本体価格 1600円(税別)
2002/03/03 記録

「彼はいったい何者なの?」

連続爆弾魔を追い詰めてみると、犯人は別の男と争っていた。あと一歩の処で 犯人を捕まえられるという処で、その男によって邪魔をされる。この男は爆弾魔との 関係を否定していたが、それなら男はどうして犯人を知り得たのだろうか。そして 何より不可思議なのは警察ですらこの男の素性が解らなかった事だった。

文章が淡々としているせいか、この謎の男に関する異常な事がそれ程緊迫感を もってこちらに伝わってこない。普通に考えたら、この男のような存在はあり得るはずが ないし、警察としても見過ごすべき存在ではないはず。

しかし実際は数人の人間が興味を持っているだけで終わってしまうし、前半は 男の出番が少ないのもちょっと不満。だから後半になって物語が収束し始めてからの 男の行動はとても面白い。

先の爆弾魔がどうしてあんな暴挙に出たのかがちょっと説得力に欠けるものの、 ここに来てやっと話が盛り上がってくるというのもちょっと遅いかも。うーん、前半を もう少し急ぎ足にしてくれても良かったかな。


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