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- ■動かぬ証拠
- 講談社ノベルス 2001/05/05 初版
- 本体価格 840円(税別)
- 2001/07/24 記録
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「ですから、ページをぱらぱらめくらないでください」
デビュー作『六枚のとんかつ』の続編、に当たる作品集。『六とん』にも登場していた
半下石が主役になっている。今回の趣向は「事件の証拠となる描写が総て
イラストになっている」と云うものだ。
アイディアとしてはなかなかの奇想だとは思うが、肝心のネタがちょっと弱い為に折角の
試みが中途半端に終わってしまった感がある。中には確かにイラストで表現する事に
よって強調されたラストもあるが、大半は別にイラストにする必要性を感じられなかった。
イラストにオチを頼る、と云う、小説としては半ば試合放棄したようなアイディアは普通の作家には
マイナス評価にしかならないであろう。この作家、『六枚のとんかつ』を創り上げた「アホバカミステリ」の
巨匠にとってはプラスに転ずる。
だがしかし。
その反則すれすれの技巧を使ってもまだ面白いとは思えないほど、メインのトリック(プロット)が
ダメなのである。いや、この作家に到っては逆に「ダメさ加減が足りなかった」と云うべきで
あろうか。
どうせならもっと奇想天外でツッコミ処満載のアホバカミステリを期待する。そのベクトルに
突き進めば、いずれは迷作名作が生まれいずる事確実だろう。確実! そう、まさに
コーラを呑んだらゲップが出るって云うくらい確実じゃッ!
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