魂魄堂 読了書覚書 - 篠田秀幸 -


■幽霊病院の惨劇
ハルキノベルス 2000/02/08 初版
本体価格 990円(税別)
2002/04/16 記録

「───そして、何よりも大きな変化は、この僕が<ミステリー作家> になったことだ」

語り手の篠田ことシノが小学生の時、近所の沼から男子小学生の首無し死体が発見される。 同時期に同級生が血まみれになって倒れているのが目撃されたのを最期に行方をくらまし、 しばらくしてから同級生の少女が首を斬られて殺される。それから26年後に起きた阪神大震災が 契機となって止まっていた時が動き始める。



一応『蝶たちの迷宮』と世界観を共有しているようだが、物語上の繋がりは無いに等しいので 気にする事はない。それにしてもタイトル負けしてるなあ。「惨劇」とか云ってる割に 問題の病院でのシーンなんて殆ど無いし。

話は小学生の頃に起きた事件、そして大学時代に起きた事件と時系列に沿って謎が提示 されるが、その解決は現在に至るまでなされていない。この両者の事件はある事柄によって 繋がっているのだが、それにしても大学生時代の事件は取って付けた感が拭えない。事件自体 がどうも物語から浮いてしまっているように思える。なぜなら、


それに後半語られる、量子物理学の話なんて今更されても。しかも登場人物達がその話に 驚愕して真剣に語り合う様はちょっとした喜劇でしかない。もう少し捻りでもあれば別なんだが、 そのまま素材だけを出されても食傷するしかないだろう。

それでもまだ本格の残滓があったのだが、最期の最期になってどうしてこんな展開にするか。 『蝶たちの迷宮』で懲りて欲しかったよ、ホント。終わり方も余りに素人臭いというか、何の 感慨も遺さないと云うか。

最期まで気を抜くなと私は云いたい。


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