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- ■八月の博物館
- 角川書店 2000/10/30 初版
- 本体価格 1600円(税別)
- 2002/08/21 記録
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「博物館よ、トオル」
ある小説家がエジプトを舞台にした書き下ろし長編小説を執筆しようとしていた。
そんな中、小説家はふと思い出す。昔小学生だった頃の夏を。暑い夏。恐竜展。
そして博物館。思い出の中の小学生の頃の作者がであった幻の博物館を───
当初、いくつかの視点パートに別れているので少し馴染むのに時間がかかるかもしれない。
小説家自身の視点、小説家が執筆中の作品世界であるエジプトの視点、小説家が小学生の
頃の思い出の視点。それぞれが関連しそうで微妙にずれている事の違和感。しかしそれも
中盤を過ぎる頃にはじわりじわりと物語が1つに収斂してくるのが解るだろう。
そして作者が伝えたかった「物語」の真意を。
ちょうど読んでいる時期が物語と同じ八月であったせいか、実際の私も地下鉄の広告に
恐竜展を見かけたりして物語世界の広がりを体験したり。そして読み進めれば解るのだけど、
これは藤子不二雄氏「まんが道」に対するトリビュート作品でもある。友人との同人誌作成や
クラスの女の子との淡い恋心・・・・・・これもタイミング良く「まんが道」を読んでいる最中なので
「物語」を創る事への情熱が余計にひしひしと伝わってくる。
ラストも見事な論理展開を見せ、SF的サプライズも巧い。その為の細かい伏線などもあり
完成度は高いだろう。
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