魂魄堂 読了書覚書 - 西尾維新 -


■クビキリサイクル
講談社ノベルス 2002/02/05 初版
本体価格 980円(税別)
2003/07/23 記録

「・・・・・・戯言だよなぁ・・・・・・」

絶海の孤島に棲む財閥玲嬢が自分の楽しみの為に5人の天才女性を孤島に 招待する。あらゆる分野での天才とその付添が集う孤島の洋館で密室殺人事件が 発生する。天才のみが存在を赦される場所。被害者が天才ならば加害者も天才 なのだろうか。工学の天才玖渚とその友人である「僕」が事件解決に乗り出した。



第23回メフィスト賞。裏表紙の「新青春エンタ」とあるように、表紙イラストからして ライトノベルっぽいというか漫画チックというか。キャラ設定もいかにもイマドキという 印象が強く、正直読み始めるのに躊躇を覚えた。

とはいえ文章そのものは結構読みやすく年齢のわりに文体の完成度が高いように 思える。問題のキャラクタ造形も慣れるとそんなに不自然には思えないかもしれない。

基本的な設定は森博嗣『すべてがFになる』を彷彿とさせる。ちょっと文章にケレン味が ありすぎるようにも感じるけど持ち前のライトノベル感が巧く打ち消しているか。ミステリィ的には 少々ご都合的すぎるキライもあるが、伏線もそれなりに張ってありラスト辺りではこの 世界観を巧く下敷きにしたサプライズも用意されていた。

散々「ライトノベル感覚」といっているが、しっかりとしたテーマを伺い知る事ができるし、 次の作品を読みたくなる。エンタテインメントとして、またミステリィとしてのバランスが 巧く取れている作品ではないだろうか。


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