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- ■魔剣天翔
- 講談社ノベルス 2000/09/05 初版
- 本体価格 840円(税別)
- 2001/07/06 記録
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「僕じゃあ、信じてもらえないでしょう?」
飛んでいる最中の飛行機の後部座席で男が殺された。だが後部座席に座っていた
男の背中から撃たれていたのだ。アクロバットショーと云う衆人環視の中で完全な
密室が成立する。
更には事前に送られてきた謎の脅迫状や死んだ男が遺したと思われるメッセージ
などケレンたっぷりの趣向になっている。文章はあいかわらず怜悧でクール。やはり
この独特の言い回しや間を好きになれるかどうかで評価が変わってくる、ある意味
トリックなどに評価が左右されにくい珍しい作家なのかも知れない。
だからと云ってトリックがお粗末では話にならないのだが、今回はきわどい処を巧く
処理しているかな。トリック自体はあまりに縛りがきつすぎてある程度の想像がついて
しまうだろう。代わり、と云うのもおかしいが暗合部分に関しては伏線も含めて
良くできているように思えた。まあ読者が解けるかどうかは別にして。
全体的に話の展開が遅いように思えるのもいつもの事だし、シリーズ通して読んでいる
人には気にならないだろう。珍しくミスリードに力が入っている良作なのではなかろうか。
「おまえは次に『どうして解ったのか?』と云う」
「どうして解ったの?・・・・・・あっ!」
ゴゴゴゴゴゴゴ。
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