|
- ■ホラー作家の棲む家
- 講談社ノベルス 2001/08/05 初版
- 本体価格 850円(税別)
- 2001/12/16 記録
|
「そう、家に憑かれている・・・・・・」
ある編集者が依頼された怪奇小説の執筆の為にある洋館を見つけだして
棲む事になった。だが次第に洋館での自分の行動が朧になり、やがて現れる
自分のファンだという女性が洋館に入り浸るようになった。そして記憶は更に
混濁し───
作者自身も実際の編集者である。それを知って当初は文章に対して期待を
していなかったが、意外にもホラーな雰囲気がじっとりと滲み出ていて、また
それなりに読みやすかった。常に文章に接しているせいもあるのかもしれない。
プロットも凝っていて、小文字の編集者による小説が作中作の形として
交互に挿入され、そして作中作が次第に現実を変容させていくのである。
更に面白いのは、部分的ではあるもののミステリ的アプローチによるサプライズ
が演出されていて、単純に恐怖を押しつけてこない処である。それで一旦
こちらの気持ちを押し止めてから更に恐怖を覆い被せてくる。
まあ、そのせいで後半ホラーに論理性が加わって微妙に恐怖感が薄れてしまっている
感もあるものの、プロットとしては概ね成功しているのではないだろうか。
デビュー作としてはかなり安定して読めるので、次回作を是非期待したい
処である。
|