|
- ■彼は残業だったので
- カッパノベルス 2000/06/25 初版
- 本体価格 819円(税別)
- 2001/11/04 記録
|
「おーい、助けてくれー! 俺は閉所恐怖症なんだよー」
・・・・・・いや、入口の鍵が掛かったくらいでは関係ないと思うが。閉所恐怖症について
何か勘違いをしてるのではないだろうか。
さて梗概。
無能な部下のせいで毎日残業を強いられている会社員が、ふと古書店で見つけた呪いの本。
ある日彼はそれを実行してしまう。その後、彼が呪った無能な部下の部屋でバラバラに切断され
燃やされた屍体が見つかる。それはあたかも彼の呪術が具現化したような惨状であった。
導入部は決して悪くはない。もともと『占星術殺人事件』に対するオマージュのような作品
であるため、バラバラにされた屍体や呪術的な符号といった部分が酷似しているといったら
島田荘司にとっても失礼だが、余りに陳腐すぎる。なんの捻りも無く、工夫もなく表面だけ
それっぽいだけで、最初に想像した通りの真相では・・・・・・
読者の予想を裏切らずに、読者の期待を裏切っている。
キャラクタにも魅力が感じられず、記号以上の存在感を与えてはくれなかった。探偵役(御手洗役?)はステロタイプ
ではあるが、それなりに主張が感じられるものの、助手(石岡?)がどんなキャラクタなのかが
伝わらない。キャラクタの存在感がある分だけ『六枚のとんかつ』の方がましだね。
そしてやはり最大の問題としては、あのまま放って置いても警察が遠からず真相を掴んでしまう
という事だ。ミステリィにおいて、ごく普通の警察組織にあっさりと逮捕されてしまうような事件には
何の魅力を感じないだろう。しかも探偵が捜査した、といっても結局は推理ではなく単なる
聞き込みに終始してしまったのも問題なのだ。
メインのトリック、キャラクタ、プロット、ロジック総てにおいて練りが足りなかったとしか云えないだろう。
|