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- ■続巷説百物語
- 角川書店 2001/05/31 初版
- 本体価格 2000円(税別)
- 2001/07/04 記録
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「御行奉為・・・・・・」
江戸の世に、裁きたくても裁けない物事を裏から自在に妖怪を操る事により片付ける。
妖怪遣いの"小股くぐり"又一とその一味。勿論、妖怪とは実際に存在する訳ではなく
作者が云う処の「概念」とでも云おうか「呪」によって創られた物たちである。
風が膚を切り裂けば「鎌鼬」となるように、妖怪とは本来眼に写らない事象の事なのだ。
だから又一らが操る妖怪も概念に過ぎない。概念だからこそ、相手を「呪」で「縛」り、
即ち呪縛する事ができる。
前作の印象は「必殺仕事人」であった。止むに止まれぬ恨みを代わって晴らす・・・・・・
だが今回はちょっと趣が変わっているように思えた。短編であるが故にあえて時系列を
ずらされ、サブキャラクタが重要な役割を担う。物語は収斂され、ある日妖怪が消える。
視点が妖怪遣いでは無い奇譚蒐集家の百介である事も意味深長だ。彼の眼で
語られるからこそ、読者は妖怪の存在を感じる事が出来るのだ。無から有を生み出し
読者をも呪縛する、百介の立場は我々と同等である。
そして最後は「百介=読者」を取り囲み憑いた妖怪たちを一気に落とす。最後の短編
において「大祓えの儀式」が完了し、百助は、読者の世界が反転する。それまでの妖怪
が居た世界は円に閉ざされ再び不可視へと立ち戻る。物語は終結する。そして又一は
こう云うのだ。
「御行奉為・・・・・・」
それにて現実と幻想の世界とを線引き真の意味で収斂する。大がかりなプロットは
ミステリィでありながら幻想の大伽藍であったのだ。
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