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- ■硝子細工のマトリョーシカ
- 講談社ノベルス 2001/07/05 初版
- 本体価格 940円(税別)
- 2001/11/11 記録
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「ちょっぴりお茶目なレオ君人形」
生放送のテレビドラマ本番中にタレントが毒を呑んでしまう。偽物だったはずの
それは本物にすり替えられ、脅迫電話が届く。劇中劇はいつしか現実を侵蝕し、
「完全なる虚構」と「不完全な虚構」が交錯する。
入れ子トリック、という事で余り詳細な梗概は難しい。
話の最初から入れ子トリックである事が解るというのは作者の自信の表れだろうか。
「TVドラマ内ドラマ」なのでその趣向は解りやすいものになっているものの、プロットが
巧妙な為にしっかりと状況を把握しておかないと虚構と現実との境界が朧に沈んでしまう。
一見メタ的な要素が突出して目立つようだが、伏線もしっかりしているし、普通なら
おざなりにされそうな「物語」部分に関しても全く無理が生じない。そもそもこのトリック自体
が幾重にも仕込まれているため、読んでいてもどこまでが作中のものでどこからが
読者に向けられているのか解らない。
しかしながらトリックの方向性は結構簡素なので、予想通りの着地を見せるか・・・・・・
と思わせといて。成る程ね、私はすっかり作者の思惑にはまってしまったようだ。
タイトル通り、まさにマトリョーシカの如く、である。ぼんやり読んでると、面白さを
見逃してしまうかも。作者渾身の作品にして入れ子トリックの白眉、と云われても
納得のいく秀作。
しかし、ミステリィ初心者には勧められないだろうな、これ。
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