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- ■マリオネット園
- 講談社ノベルス 2001/10/05 初版
- 本体価格 840円(税別)
- 2002/06/21 記録
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「いえ、隈能美堂巧です」
謎の手紙の誘いに従い後動悟が閉鎖されたテーマパーク、マリオネットランドに脚を運ぶ。
そこで通称「首吊塔」と呼ばれる場所で夜を過ごす事になる。だがそれ以降彼と連絡が
取れなくなり、その間にいつものメンバが奇妙な探偵依頼を受け動き出す。依頼者に
見せられた手紙によって忌まわしき過去が蘇る。
やはりプロットがしっかりしていて安心して読める。当初は伏線が見え見えじゃないかと
思っていたのだが、それ自体がデコイ(おとり)となり真の伏線から巧く視線を外している。
それに今回はユイとカケルがちょっとおとなしめなので、集中力が削がれることもないのも
良い感じ。
しかしながら肝心の舞台である「首吊塔」における展開にはちょっと首を傾げる。定番と
なっているのだろうけど、こういう大がかりなトリックを続けるのはアレンジがあるとしても
新鮮味に難がでてくる。
ふと思ったのだが、この作者は良くも悪くも島田荘司の後継者なんだな、と思う。
この作者の巧いところは探偵役を分けた事だろう。ひらめき型の探偵の鳴海、そして
論理的思考の後動。
特に後動は御手洗のような行動力を伴っているため、舞台の中盤ではその姿を
消して単独行動を取る事が多い。島田作品では御手洗が居ない間、石岡が表舞台で
右往左往しているが、霧舎作品では鳴海が事件を進展させ読者を飽きさせないように
している。
しかし探偵役を分けたことにより、事件の展開も前半と後半で分断されてしまっている
ようで、その仕切直しが勿体ないと思う事もある。
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