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- ■双月城の惨劇
- カッパ・ワン 2002/04/20 初版
- 本体価格 952円(税別)
- 2002/07/28 記録
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「何ですって!」
パリ警察の判事であるベルトランが招待されていたライン川流域の古城「双月城」で、密室の中から
首と両手首が切り取られた惨殺死体が見つかる。一歩遅れて到着したベルトランと、彼の好敵手であり
現地警察に所属するストロハイム男爵が密室の謎に挑戦する。そして新たな惨劇が・・・・・・
古めかしい古城、謎に彩られた伝説、双子の美女に密室と古式ゆかしい伝統的な推理小説。無駄な蘊蓄も無く、
キャラクタはシンプルで懐かしい。ふと二階堂黎人『人狼城の恐怖』を思い出すが、アレとは似て非なる
小説で本作の方が読みやすく伏線も凝っている。二階堂氏が本作の解説をしているのは何だか
可哀想になってしまう。
とにかく事件に関する事以外のエッセンスが省かれているので、このページ数でもかなり密度が濃く
なっている。読み応えとしては十分すぎる程だろう。
しかしトリックに少し無理がある(気になる程ではないが)のと、殺人事件が起きている割には関係者が
のんびりし過ぎているのがちょっと気になった。どうも事件の続発を防ごうという気が警察関係者にも
余りみられないような・・・・・・金田一少年の事件簿じゃないんだからさ。
とはいえ、この懐かしい雰囲気は素晴らしいし、プロットも魅力的で伏線やトリックなど細かい配慮が
しっかりとなされている。ラストへ到る展開は唸らされる。最近なかなかみられない骨太の作品だろう。
これからの注目株である。
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