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- ■紫骸城事件
- 講談社ノベルス 2001/06/05 初版
- 本体価格 880円(税別)
- 2003/07/26 記録
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「───良し」
遙かな過去、世界の存亡を賭けた戦いに使用された呪われた城。そこで行われた
魔術師大会にて謎の連続殺人事件が発生する。舞台である紫骸城は大会が終わるまで
完全に封鎖され誰も出ることができない。一流の魔術師たちが防ぐことすらできない事件の
真相とは・・・・・・
ファンタジィ世界において一般的なミステリィで取り扱われるトリック、密室やアリバイなどを
成立させるのは困難であろう。特に今回は登場人物の大半がそれなりの腕を持つ魔術師
なのだから尚更だ。
だが逆に「呪いによって外界から封鎖される」という絶海の孤島や雪の山荘のようなベタな
設定を避ける説得力もある。とはいえ、魔法というアバウトな設定にどれだけの制約と説得力を
持たせるのが重要になるだろう。
その観点からみると、ちょっと評価が厳しくなってしまう。魔法に対する説明が不足気味で
限定条件などもなくどうも万能らしいのは問題だろう。その結果派手な事件が起きたとしても
ロジックで理解しようとはしなくなってしまう。
トリックに関しても同様で、確かに伏線はあるものの、そのトリックに対する結果があまりにも
荒唐無稽であり「どうしてそこでそうなってしまうのか」に触れられていない。ある人物が失血死
していた原因などいくらファンタジィでも物理法則を無視しすぎなのも勿体ない。
折角魔導大会の描写があるのだから、もうちょっと魔法について説明しておけば少しは
受け入れやすいと思うのだけど。
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