魂魄堂 読了書覚書 - 菊地秀行 -


■"影人"狩り
JOY NOVELS 2000/09/25 初版
本体価格 800円(税別)
2001/07/10 記録

「ロート製薬がか?」

剣道達人のトンキチが通う高校では行方不明事件が頻発していた。 トンキチの両親も"向こう側"に連れ去れていた。そして、またトンキチの 前に"向こう側"の存在が姿を顕そうとしていた矢先、超常現象研究家と 名乗る先生が調査に乗り出す。

どうにも中途半端かも知れない。最近の傾向として作中で設定を明らかに しない傾向があって、話の終わり方もすっきりしない事が多い。多分、次回 への伏線なんだろうが、これも明確に次回作が出るとは限らないし、そうすると やはり読後感が余り良くない。

登場人物の相関も良く解らなくて、誰が味方で敵なのか。やはり最も問題 なのは敵の意図が全く解らない、と云う事だろう。そのせいでストーリィがぼやけて しまいどこで始まってどこで終わったのかが明示できていないのだ。

それっぽい設定と思いつきで創ったキャラクタ、そしてとりあえず謎で強大な敵。 これらを混ぜ合わせるとこんな作品になるのかもしれない。やはりもう少し プロットを練っても良いように思う。


放浪獣ながれじゅう(上・下)
KSS出版 2000/07/30 初版
本体価格 各790円(税別)
2001/08/3 記録

「おい、正当防衛だ」

頻発する大地震や異常気象により日本各地で暴動が発生していた。まあ 菊池氏得意の設定です。で主人公は一流の傭兵である"ブルー"ジョーに 美貌の"GRAY LANCER"の2人。彼らが偶然助けた母子が隠された ピラミッドの謎を巡り暴力団や古代遺跡の守護神と対峙する。

うーん・・・・・・2冊に渡っている割には内容が薄い。ストーリィ展開も鍵を 握る母親があちこち連れ廻されながら、その先々でレイプされていくって だけじゃあねえ。いやそれも一部伏線にはなっているのだけど。

そもそも連載媒体が東スポって段階でそういったものが求められている わけで。だとするとストーリィは在って無きが如し、か。主人公が2人居る 割には役割分担が巧く出来ていなくて、片方が活躍してると、、もう片方が 別の場所にいて出てこなかったりとちぐはぐ。

最後ももうちょっとひねりがあると良かったが。


■媚獄王
祥伝社NON NOVEL 2001/06/10 初版
本体価格 各810円(税別)
2001/09/23 記録

「ミスったな。死んでます」

「新宿」の一角にひっそりと営業する花屋。だがここの店主、ふゆはるは「人捜し屋」秋せつらの従兄弟 であった。そして謎の調剤師イリアが依頼された、ある財閥の遺産相続事件。ふゆはるとイリアが財閥が 主催した舞踏会に出席したとき───

うーん、キャラクタは悪くないのだがプロットが解りづらい。結局は単なる財産目当ての遺産相続なのに 描写が迂遠な為に、どうも何が起きているのかが解らない。作者本人はかなり気に入っているようだが、 自分で理解しているからなのか、やはり物語が巧く説明しきれていない。

それでもやはりキャラクタ造形が巧いせいか、読んでいてそんなに苦痛でも無いし、時折顕れる秋せつら には、にやりとさせられる。正直、次回作を読んでみないとまだ海の物とも山の物とも判断できない。


魔香録
■魔香録
祥伝社NON NOVEL 2002/02/20 初版
本体価格 各819円(税別)
2007/04/23 記録

「女は気に入らん」

航空事故により世界を守護する花「マリファサ・ルピア」が枯れ始めた。一週間以内に代わりの花を 用意しなければ世界が滅ぶ。そして花探しに指名されたのが、新宿の花屋秋ふゆはる。しかしその花を 奪おうとメフィストの仇敵が立ちはだかる。


定番の魔界都市もので、メインは秋せつらの従兄弟の秋ふゆはる。シリーズ2作目。一応メフィストや 調香師イリヤ、屍刑事といったメジャ処のキャラも出ているのだが如何せんこのふゆはるが地味すぎる。

例によってほぼ無敵設定があるものの、何やら伏線を考えているのか「取りあえず無敵」なだけで 全然魅せていない。

今回の敵も半分自爆してただけのような気がするし緊張感が…。やっぱり「新宿シリーズ」に胡座をかいて 思いつきでキャラクタを投入し続けるのはよくないと思います!


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