魂魄堂 読了書覚書 - 石崎幸二 -


■あなたがいない島
講談社ノベルス 2001/03/05 初版
本体価格 800円(税別)
2001/10/01 記録

「石崎さんは黙っていなさい」

石崎たち3人は、合宿がてらにあるイベントに参加する事になった。そこは無人島であり、 精神的サバイバル生活を送るのだと云う。そして島に上陸するにあたっての条件が1つ。 それは島にはたった1つの物しか持ち込めないという事だった。

相変わらず、石崎とミリア&ユリとの会話が面白くサクサクと読める。そして舞台設定も 面白く、それに付加された条件もシンプルだが面白い。よくある質問の通りで一見捻りも 何もないように思えるが、実際に舞台が整えられるとなかなか悪くない。その割にみんな 余り迷わなかったようなのがちょっと気になるけど。

ミステリィとしても今回はかなり良く出来ているのではないだろうか。心理的伏線がきっちりと 張られているし、サプライズもなかなか。とはいえ、問題も多く、先ずは凶器の問題。これは ちょっと伏線としては弱いだろう。犯人の動機に関してもあれじゃ伏線とは云えず、一気に そこまで解ってしまうのはちょっと牽強付会気味。

ある意味、事件そのものより「たった1つだけ持ち込める物」に対する理由付けの方が 面白かったかも知れない。特に会話そのもので愉しめるし。面白いけど、事件が起きる前が ちょっと長すぎなのではないだろうか。後半が急ぎ足。

でも確実に成長している。


■長く短い呪文
講談社ノベルス 2001/09/05 初版
本体価格 740円(税別)
2001/10/12 記録

「キャ、キャラがかぶってる・・・・・・」

石崎ら3人は、ミリアたちの後輩が「自分は呪われているかもしれない」と実家の 離島に帰った後を追う。学校では樹に刺さったネジや地面に描かれた謎の螺旋が 見つかり、離島でも人形の腕が何者かに切断されるという事件が起きる。「呪い」 の正体、とは・・・・・・?

シリーズも3作目になると、ハイテンションのキャラクタにも慣れてきたのか何だか ミリアとユリが少し落ち着いて見えてしまう。キャラ的には申し分ないし、相変わらず 石崎との会話は愉しめた。

今回は話の初期からミステリィ的なアプローチを全面に押し出しているので、 何だか解らない内に終章という事は無い。途中提示される謎、即ち「呪い」に 関しても実に巧妙な伏線があり(ちょっと迂遠に過ぎるような気もするが)、その方向性と 着地のさせかたにはなかなか驚かされる。

しかし途中で推理された謎の解答に比べ、真相の方が見劣りしてしまっている感が 強い。それまでのオリジナリティが一気に瓦解し、何処かで聞いたような展開になって しまったのが残念でならない。それに無駄が省かれているのは良いが、真相を暴く段に なってからが慌ただしく、読んでいて唐突に真相に辿り着いたような印象を受けた。 もう少し引っ張ってくれても良いと思うのだが。

少なくとも作品を重ねるたびに面白くなっている。そして何より石崎ら3人の会話が 面白すぎる。次作にも期待したい。


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