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- ■スミソン氏の遺骨
- 創元推理文庫 1999/11/26 初版
- 本体価格 560円(税別)
- 2003/01/18 記録
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「自分の足跡は隠してあるよ」
スミソニアン博物館職員のヘンリーは見学者を案内していた。その途中頭蓋骨の
標本から博物館創設者の頭蓋骨が発見される。不可解な謎を解明していくと
博物館ないから奇妙な屍体処理を施された他殺体を発見する事になる。
スミソニアン博物館という一般には余り縁のない(それが日本人ならなおさらだ!)場所が
舞台であり、事件にそれ程重要ではないとはいえ博物館の見取り図くらいは付けて
欲しかったかも。
事件を見ると変死体が続々発見されるため猟奇的な印象を受けるが、
場所のせいもあるのか登場人物が変なのか非常に醒めた印象を受ける。
一応探偵役らしい初老のヘンリーだが、推理というよりは状況証拠からの推論で
話を進めていくためミステリィとしはちょっと物足りないかもしれない。
だが本作品の面白さはぶっちゃけてしまうとミステリィやストーリィにはないのだ。
どうやらスミソニアン博物館にはアカデミックな人間が揃っているらしく、ヘンリーを
取り巻く人物たちとの会話がとても面白い。
しかしうっかり読み逃すとそんな会話にひっそりと伏線が張られていたりして決して
本質を見失ってはいない。事件が起きて怒濤の展開を見せる、という事はあまり
ないのでそういった部分を愉しめるかどうかでこのシリーズの評価ががらりと
変わってくるのではないだろうか。
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