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- ■どんどん橋、落ちた
- 講談社 1999/10/09 初版
- 本体価格 1700円(税別)
- 2001/11/14 記録
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「タケマル・・・・・・その愛犬」
本作品集は純粋な「犯人当て」が主題な為、梗概は割愛しメモ書き程度の
感想にとどめておきます。
「どんどん橋、落ちた」
落ちた橋の向こう側に居る少年が崖下に突き落とされた。だが橋は無く、少年に
近寄れる人間は居ないように思えた。
これは引っかかるなあ。確かに「読者への挑戦状」があるだけあって、しっかりとフェアに
書かれている。しかしフェアとアンフェアの境目を狙ったかのような作品で、人によっては
愉しめないかもしれない。ある意味肩すかしされる作品だろう。
「ぼうぼう森、燃えた」
犬の集団が棲む森が火事に見舞われた。ちりぢりに逃亡を図った犬たちだが、その
中の一匹だけが何者かにより殺されている事が解った。この火事の中、誰がこの犬を殺す
事が出来たのだろうか。
「どんどん橋、落ちた」の後に読めば基本的な考え方は解るだろう。しかしそれが作者の
狙いであり、油断するとその思惑に乗せられる。今回も「読者への挑戦状」があり、フェアでは
あるのだが、ちょっと真相への伏線が物足りない気がする。もっとも、この挑戦状は読者に
向けられていると同時に、作中人物に向けられているんだが。
「フェラーリは見ていた」
ある男が飼っていたサルが殺された。サルが居たケージへの通路は2ヶ所。当時家に居たのは
5人だが、その内の飼い主は1度も席を立っていなかった。
これはちょっと狙いすぎのような。確かにフェアではあるのだろうが、清涼院流水じゃないんだから
ネタに対して視野狭窄してしまうようなのは勘弁して欲しい。この作品はとてもじゃないがパズラとは
思えないし、真相を知らされても納得のいかない感じがしてならないのである。
「伊園家の崩壊」
某アニメを彷彿とさせる平和な家庭に翳りが生じ始めていた。そんな中、その家の主婦が
2階で屍体となって発見される。階下には人が居て、階段を通った人は無く、開いていた2階の
窓から犯人が逃亡したのだと思われた、が。
ブラックユーモア満載のパロディ小説には違いないが、その印象に囚われていると足下を掬われる。
パロディとは思えない程緻密なプロットに伏線。当然「読者への挑戦状」もあり、しっかりとした
犯人当てが可能なのである。トリックとロジックと、それを支える伏線とがぴったりと噛み合わさっている
佳作だろう。
「意外な犯人」
TVドラマの企画中に、その企画案と同じような状況での殺人が起きる。物語を司っていた
はずの原作者までもが殺され・・・・・・
これは実際にTVドラマで放映された作品であり、いわば「TVドラマ内TVドラマ」であったのだろう。
狙いは面白いし、もともとTV向けに創られただけあって映像を前提にしている。小説よりドラマで
見た方がより面白くなっているのだろう。プロットが面白く、犯人も意外ながら、さらに作者の罠が
待っている。目の前だけを見ていると、やっぱり脚を引っかけられるのだ。
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