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- ■時の密室
- 立風書房 2001/03/05 初版
- 本体価格 2200円(税別)
- 2001/11/09 記録
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「森江です、森江春策」
森江が弁護する事になった男は、以前学生運動を鎮圧する機動隊に属していた。
男は躯が不自由だったが、その原因が学生運動にあったのだという。男は自分を
こんな躯にした人間の殺害容疑を掛けられていた。森江は男の無実を証明する
為に立ち寄ったある喫茶店で気になる小冊子に出逢う。
『時の誘拐』の姉妹作品である本書も、舞台を現代から過去に写し、そして過去の
事件と現在の事件とを巧妙につなぎ合わせ融合させている。しかもその過去の事件は
1件だけではなく、事件の起きた時代も背景も全く異なっているのだ。共通するのは事件の
起きた場所だけなのである。
最初の内は途切れ途切れに語られるそれぞれに事件にイライラさせられるかもしれない。
しかし森江が語るように、これらの事件は同じ根本に基づいている。森江は時代を行き来
しつつ弁護するべき依頼人の無実を求める。
それぞれを独立した話と捉えてもそれなりに面白いが、後半それらが融合していくさまは
美しい。ただ、過去と現在を融合させて壮大なミステリィを創り上げた割に、中心となるべき
現代の事件の幕切れがちょっとあっけなくて、単純すぎるミスを犯すかな、とちょっと醒めて
しまったのが残念でならない。
広げた風呂敷を畳み間違えて、隙間が出来てしまったような感じかな。
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